会 員 各 位
日に日に日差しの強さを感じる頃となりました。
皆様にはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
さて、下記の内容で第1回研究会を開催いたします。
皆様、奮ってご参加いただきますよう、お願い申し上げます。
記
日 時: 4月26日(金)10:45~12:15
場 所: 特別会議室 (高槻ミューズキャンパス 12階)
※入構手続きの関係上、参加希望者は25日(木)16:30までに経済学部・佐藤雅代 教授(msy_sato@kansai-u.ac.jp) あるいは 経済学会室 にご連絡をお願いいたします。
報告者: WIFU (= Wittener Institut für Familienunternehmen) Research Team
– Prof. Dr. Tom Rüsen : Managing Director WIFU / CEO WIFU-Foundation
– Prof. Dr. Rudolf Wimmer : Extrabudgetary Professor for Leadership & Dynamics in Family Businesses
– Prof. Dr. Heiko Kleve : Chairholder Organisation and Development of Entrepreneurial Families
– Dr. Tobias Köllner : Chair of Organisation and Development of Business Families
– Dr. Sigrun Caspary : Expert in Japanese Studies with Economics and Political Sciences
○タイトル:
Family Business in Japan
– Differences and Similarities to German Family Businesses
○研究関心:
日本が明治初期に国際的な政治経済ステージ(舞台)に登場して以来、日本的経営方式を対象とする研究が行われてきました。その結果、日本企業のマネージメントが西洋企業のそれと異なっていることが強調されてきました。
日本企業は大手企業と中小企業に分けられます。大手企業は明治後期から発展し、大正期および昭和初期には「財閥企業」と呼ばれる巨大企業のファミリービジネスを発展させるに至りました。財閥企業が、財産を握る家族を中心に、さまざまな新しい産業分野に進出し、短期間で経済力を拡大し、日本の経済発展をリードする独占力を持つようになったことはよく知られています。財閥企業は、第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部の指令により、「日本軍国主義を制度的に支援した」との理由で解体されました。また、持株会社制度も禁止となりました。戦後になると、日本企業の系列システムが生まれましたが、以上のような経過を背景にして、日本では、ファミリービジネスという概念にネガティブなイメージがつきまとうようになりました。
それから数十年を経て、日本企業は系列制度を発展させて国際経済市場に再進出し、再び短期間でさまざまな分野でリードするようになりました。1980年代には、日本研究の研究者たちは、逆に西洋企業が日本企業から学ぶべきだと指摘するようにもなりました。このような戦前、戦後の日本企業の成功の原因として、儒教的道徳を含む文化的要素が企業発展に貢献したという有力な説があります。しかし、特に戦後の大手企業の経営の発展において、ファミリーが重要な要因として影響したということは考慮されることがありませんでした。中小企業についても、例えば下請け関係がよく研究されてきましたが、そこでもファミリーがビジネスに与えた影響についてはタブーとされがちであったといえます。
以上のような日本の事情とは対照的に、西洋諸国では、ファミリービジネスに対する信頼感は高く、数十年前から研究対象となっています。WIFUは二十年の歴史を有するドイツのウィッテン・ヘルデッケ大学に属するファミリービジネス研究所であり、ドイツ、ヨーロッパのファミリービジネスの研究ばかりでなく、インドや中国のファミリービジネスも研究してきたヨーロッパの最大研究所であります。ファミリービジネスの歴史を見ると、世界に存在する長寿企業の多くは日本の企業ですし、その多くがファミリービジネスであることとは明確です。このことは一見したところ、上述した日本企業の歴史的経緯と矛盾するようにも思われます。そこで、WIFUでは最近、日本のファミリービジネスおよびビジネスファミリーに焦点を当てる「ジャパン・プロジェクト」という研究チームを作り、数世代にわたるビジネスファミリーの及ぼす役割、または数世代の経営に貢献するファミリー、ファミリービジネス、ビジネスファミリーをテーマとして取り上げることにしました。
最初に、日本の「同族」や「イエ」の構造とその歴史をみてから、「同族」や「イエ」という考えが今日のファミリービジネスにどのような影響を与えてきたのか、または今日まで影響し続けているかを研究する必要があります。その際には、西洋と異なる日本文化の影響も取り上げることになります。たとえば、世界各国の比較研究では、日本、中国、韓国などの国々では経済発展が儒教の思想・道徳の影響を強く受けてきたことが主張されています。したがって、宗教を含めた文化的要因がビジネスファミリーやファミリービジネスにどのように影響してきたかも調査する必要があります。
こうしたことは、日本のファミリー企業がなぜ長寿なのかということや、それが時代を経て現在にどのような問題点をもたらしているのかということの研究にも繋がります。家族やイエを長く維持するための後継者選択の問題も大切ですので、後継者選択に関する戦略も研究対象とします。そして家族・イエの構成員の間で問題が生じたときにそれを解決する戦略、または問題が現れる前にそれを防ぐための戦略にも注目すべきだと考えています。
研究のための枠組みとしては、ファミリービジネス研究でこれまで議論されたきた理論的枠組とともに、WIFUの研究者たちが独自に発展させてきたファミリービジネス研究の枠組みも用いることになります。日本のファミリービジネスの調査を目的として、2019年の4月に日本を訪問することを予定しています。この調査旅行が重点を置く課題は次のようなものです。第一は、ファミリーおよびビジネスの構造であり、宗教的背景がファミリービジネス、ビジネスファミリーの成功に及ぼす影響です。第二は、ファミリービジネス、ビジネスファミリーのガバナンス構造です。第三は、後継者問題です。
以上